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さくらめんと。

何の気なしに小説をうpしてみる。
昔書いて放置しといたのを、なんとなく引っ張り出して手を加えてみた。
つか、編集にものすごい時間がかかった。労力もかかった。
おかげでmhp2が出来なかったよ。
春がテーマだった気がする。
散ってく桜の花を見ていたら、なんとなく思い出したので晒してみることにした。
ちょっぴりミステリー&ホラー風味。
まぁ、これくらいでミステリーだのホラーだの言ってたら、後ろから刺されちゃうな。
本当にほんのりとそんな感じするだけですから。

ツーか何より、長い。
正直マジで長い。
レベル違いで長い。

カテゴリーにSS付きってあるけど、SSってレベルじゃないほどに長い。
目がちかちかするほど。
書いてた僕が目がちかちかしたから……orz
A4用紙10枚とかじゃ収まらない。
正直コピーして印刷して見た方が目に優しい。
だってね、後で400字詰めの原稿用紙に入れたら、30ページ近くあったんだよ。
まぁ、改行が多いのも理由だけどさ。
そしていつもの如くBLチック。
まぁ、名前さえ気にしなきゃ多分、女って言っても問題ないのかも。

とにかく長いから、
見たい人だけ心してドゾ↓
見たくない人&覚悟の無い人は光の速さでリターン↑

……さて、真相に気づける人は居るかなぁ~♪

桜の樹の下には、死体が埋まっているんだって……――。


     SAKURAment


4月も終わりを迎える頃。桜の見ごろはもう終わりを迎えていて、葉桜となっている頃。
一本だけ異様なほどに、満開の花をこうこうとつけ続ける桜の樹があった。
住宅街から少し離れた公園。
桜並木の名所で、これが桜の頃ならば花見の家族連れなどで賑わうだろうが、花も終わるこの頃では人影は殆ど見えない。
俺と、こいつの、二人きり。
「ねぇ、何であの樹だけ満開なんだろうね」
こいつ、三ツ森 拓真はその満開の桜の花を見つめながら、隣に居る俺、金谷 幸彦に尋ねてきた。
俺はゆっくりと件の桜の樹を見上げながら、少しだけ首をかしげる。
狂い咲きとでも言うのだろうか、一本だけ。
「そういえば、こいつだけだな。誰か世話でもしてやったのか?」
「死体でも埋まってるのかな?なんてね」
冗談めいた口ぶりで拓真は言うと、何が楽しいのかくすくすと笑った。
本当に拓真は良く笑う。
こんなに綺麗に……ああ、こんなにもよく笑うようになったのはいつからだったっけ?
「よく聞く話だけど、何で桜の下に死体が埋まってるんだろうな?」
本当に埋まっているという事実も無いと言うのに、実しやかに流れる噂。
桜の樹の下には死体が埋まっているという。
何時から誰が言い始めたのか、きっかけになった事件でもあったのか、まったく根拠も無いのに、誰もが一度は聞いたことがある。
「そうだなぁ。あまりにも綺麗だから、裏があると思っちまうんじゃないか? 人って美しいものが好きな反面、美しいものを憎むから」
拓真は、その満開の桜の樹の元へと歩み寄る。
ごつごつした粗野な樹皮に、壊れ物にでも触れるかの如くそっと手を当て、拓真は少しばかり憂いを帯びた表情で咲き誇る花を見上げる。
花は花弁ひとつ落とすことなく、そこで煌々と咲いていた。
まるで、時でも止められたかのように。
「桜の樹の下には、死体が……」
拓真が呟く。
その声は、先ほど楽しそうに笑っていた響きとは一転、重苦しさを帯びている。
まるで、搾り出すように紡がれた声だ。
「どうした、拓真」
「……なにか、忘れているような気がする……」
憂いを帯びた表情のまま焦点の合わぬ瞳で、拓真はじっと花を見ている。
それは今にも壊れてしまいそうなほどの儚さで。
「桜の下に、死体でも埋めたのか?」
俺はわざと、茶化すようにそう言ってのけた。本当はそれ以上、その儚い姿を見て居たくなかったのかも知れない。
「そんなもの、埋めてないって」
拓真は桜の樹から視線をはずすと、俺のほうへと駆け寄ってくる。
手を差し出せば、拓真はそれを迷わずに握ってうれしそうに笑った。
手を繋ぐのはいつものこと。掌に伝わる温度も、拓真の掌の感触も。
「俺は埋めたことあるぜ?」
ちょっと脅かすつもりで言ってやる。
「ゆ、幸彦?」
予想通り、拓真は驚いたように目をいっぱいに開いて俺を見つめてくる。
俺は思わず笑ってしまった。
「金魚の死体。祭りの夜店で、すくってきたヤツ」
「ああ、なんだ。それなら俺も、昔飼ってた小鳥を埋めたことあるよ」
拓真は露骨に安心した顔で、自分のことを話し出す。
しかし、俺はその話を半ば聞いていなかった。
なんとなく、さきほどの桜の樹が、やけに金魚を埋めたときを思い起こさせた。
赤い金魚。水槽の中で浮かんで死んだ。白い腹をぷかりと見せて、瞳を濁らせたまま死んでいた。
幼い頃の記憶。
蝉の鳴き声。吊り下げられた蚊帳。蛇口から落ちた滴。
縁台を上って入った部屋の広いちゃぶ台の上、目の前に飛び込んできた、小さな金魚鉢の中。
浮かんだ、鮮やかな朱色。
泣いていた、気がする。
小さな手にスコップを握り締め、一度も振り返ることなくただ、駆け抜けていた。
片手に握り締めた金魚の死体。指を伝ってぬるりと滴が零れ落ちる。
穴を掘ってその体を横たえると、やけに生々しい死の臭いを感じた。
濁った魚の瞳が、じっと俺を見ている。
虚ろな、小さな金魚の瞳。その中に俺の姿が映っている。
死んだ魚の瞳に映されれば、己も死の中へと引きずり込まれるような気がする。
とにかく怖くて、怖くて。その姿を、これ以上見ていたくは無かったんだ。
俺は泣きながら再びスコップを手に持った。土をかぶせて……土がだんだん上にかぶせられて……。
そうして、見えなくなった。
俺は、徐々に土に埋まって見えなくなってゆくのを見下ろしていた。
……えーん……えーん……
泣き声。
俺ではない、誰かの泣き声。
泣いていたのは、誰だっけ?
泣いているのは、誰だっけ?
「幸彦? 聞いてる?」
気がつけば、拓真が不安そうに俺を覗き込んでいた。
いくばくか、ぼんやりとしていたようだ。
「ああ、ごめん。ちょっと考え事をしてた……」
「俺の話、そんなにつまらなかったのかよ」
「そうじゃなくて……」
拗ねる拓真を必死でなだめながら、俺は桜を振り返る。
沢山の緑の中に、異様なほどに生えるほのかなピンク。
狂い咲く、散りもしない、桜の花。
いつもは美しく見える筈なのに、その時はやけに気持ちが悪いものに思えた。


5月に入っても桜は散ることは無かった。
満開の花をつけたその両手を、一杯空へと広げている。
「やっぱり桜、満開だね」
桜の花を見上げながら、拓真は不思議そうに呟いた。
「ああ。本当に死体が埋まってたりしてな」
猫の死体くらいなら埋まっているかも知れない。それくらい思わせるほどに、桜はいっそう美しく妖しく咲き誇っている。
花びらのひとつすら、散ることも無い。葉が開くことすら無い。
そう、まるで花の盛りに時を止められたかのように……。
拓真はその桜の元へ、以前と同じように駆け寄った。
「なんだろう、やっぱり何か忘れてる気がする……」
その幹に再び手を触れて、何かを必死に思い出そうとしている。
その表情があまりに真剣なので、俺はしばらく好きなようにさせて、見守ることにした。
桜の樹から少し離れた備え付けのベンチに腰掛けて、桜の樹の下にいる拓真を眺める。
思い悩むその横顔も綺麗だ。けれど、笑っている拓真が一番綺麗だと思う。
そういえば、俺が拓真に初めて出会ったのは、桜の樹の下だった気がする。桜の樹の下で、拓真は泣いていた。
そうか、俺はそんな拓真の美しさに、惚れたんだっけ。
あれは、いつだった?
……えーん……えーん……
鳴き声が聞こえる。
桜の咲いた頃から、よく笑うようになった拓真。
じゃあ、それ以前は?
「……俺は幸彦に呼ばれて、ここに来た?」
拓真が呟く。幹に突いている拓真の手が震えていた。
「幸彦がそのベンチに座ってて、俺が遅れて隣に座って……」
何か、嫌な予感が体中を駆け巡る。嫌悪とも恐れともつかぬ不安が、腹の中からせりあがってきた。
それは瞬きする間すら待たず、なんともいえぬけだるさのように、体を支配してゆく。
桜の樹の下には、何が埋まっている……――――?
拓真は片手を樹の幹に突いたまま、ゆっくりとしゃがみこんで地面に手を触れた。指先でゆっくりと土をかいて……。
「拓真!」
殆ど反射的に俺は拓真の名前を呼んで、その行為を止めていた。
俺の声に驚いた拓真は、弾かれたように手を離す。俺は駆け寄って、その拓真の手を掴んだ。
「あ……どうしたの? 幸彦」
「いや……手が汚れるぞ。子供じゃないのに、土遊びなんて」
何か苦いものが込みあがるのをこらえて笑うと、土のついた拓真の手を丁寧に払ってやる。
拓真はそんな俺の手の動きをじっと見ていた。
「もう行こうか、拓真」
「あ、うん」
いつものように手をつなごうと手を差し出して、いつもと違うことに気がついた。
拓真の表情が固い。いつもならうれしそうに握り返してくるはずの手は、彼の胸の前で固く握り締められている。
だからそれ以上、俺には手を伸ばすことなんか出来ず、無言のまま二人並んで歩き続けた。
かける言葉が、見つからなかった。
俺はこんな時いつもどうしていた?
何故だろう、最近記憶があやふやな気がする。
俺はいつ、拓真と出会った?
俺はいつ、拓真を公園に呼び出した?
拓真は、何を知っている?
「……ねぇ、幸彦」
「……ん?」
「桜の樹の下には、何が埋まっているの?」
……えーん……えーん……
泣き声。
土を掘るスコップの音。
――…桜の樹の下に、一体何を埋めたんだ……?


肩にずしりと食い込むそれを担いで、俺は公園へと来ていた。
時は深夜の0時。辺りは街頭の明かりしかなく、50mも先が見えない。
担いでいる物が天体望遠鏡なら天体観測でもするようだが、これはスコップだ。
天体観測なんて綺麗なものではなく、これは……。
死体探しだ。
満開の桜の樹の下で、俺はゆっくりと空を仰ぐ。月の無い暗い夜空は、ただ黒々と闇を湛えるばかり。
俺はその根元に、力いっぱいスコップをつきたてる。
――……桜の樹の下には、何が埋まっているの?
俺もそれが知りたい。
黙々と土をかいて、桜の根元を掘り起こしてゆく。
そして、どれくらい掘り起こしたであろうか? スコップの先が何かにぶつかった。
「……これか?」
シャベルから手に切り替えて、手で土をかき出す。
ふと、指先がそのものに触れた。
「……?」
満開の桜にさえぎられた街頭の明かりは、それを克明に浮かび上がらせることは無い。
俺はポケットの中から携帯を引き抜いて、ライトをともした。
小さな携帯のライト。焦点を合わせられず、何度も迷いながら、やっとその明かりは目的のものを見つける。
「……!!」
明かりが当たったそれは、人の手。土に埋もれて指先だけが、わずかに覗いている。
「……ああ」
うるさいぐらいの鼓動。荒い息。零れ落ちた土塊。
そうか、思い出した。
春も初め。桜もまだ、蕾がほころびかけた頃。
「は……ははは……ははははっ……」
殺した。
すがるように伸ばした手。
その指先が背中に触れた。
――とん……。
指の先の、軽い感触。
声も上げず、そいつは階段から落ちて、頭を強く打った。後頭部から大量の血をこぼして死んだ。
遠いバイクのエンジン音。吹き抜ける風。顎から落ちた雫。
コンクリートの階段の下、レンガの遊歩道の上、目の前に飛び込んできた、ねじた体。
流れ出る、鮮やかな朱色。
泣いていた、気がする。
手が白くなるほどスコップを握り締め、一度も振り返ることなくただ、駆け抜けていた。
背中に担いだ人の死体。背中を伝ってぬるりと血が零れ落ちる。
穴を掘ってその死体を横たえると、やけに生々しい死の匂いを感じた。
開かれたままの濁った魚の瞳が、じっと俺を見ている。
死んだ目が、俺をじっと見つめてくる。
虚ろな瞳。その中に、魚眼レンズに映し出されたかのように歪んだ、俺の顔。
怖かった。
死んだ瞳に映されれば、死に引きずり込まれてしまう。
怖くて怖くて、とにかく怖くて。その姿を、これ以上見て居たくは無かったんだ。
泣きながら再びスコップを手に持った。土をかぶせて……土がだんだん上にかぶせられて……。
そうして、見えなくなった。
俺は、徐々に土に埋まって見えなくなってゆくのを見下ろしていた。
土にまみれた指先。
これ以上掘り返すことは出来なかった。死んだ瞳を、もう一度見たくなかった。
ゆっくりと、シャベルで土をかぶせてゆく。
これは、誰の死体だっけ?
……えーん……えーん……
あの泣き声は、誰のものだったっけ?


翌日だ。
「どうしたの、幸彦?」
拓真が不思議そうに俺を覗き込んでくる。
「あ、うん……」
俺はわざと視線をはずした。いつも繋ぐ手も、差し出さなかった。
拓真は本当のことを知ったら、気持ち悪いと言うだろう。死と、土にまみれたこの手など、握りたくは無い。
「……幸彦」
拓真の弱弱しい呼び声を無視して、俺は桜の樹を見上げる。
狂い咲く桜は、死体から養分を吸い取り尚のこと美しく禍々しく咲き誇る。
あのときから時が止まったように、死体が埋まっている事を忘れるなと責めるように。
「幸彦、最近変だ。特に、桜の樹を見た頃から、ずっと……」
拓真は困惑したように瞳をゆがめて、俺を見上げてくる。
「ねぇ、桜の下には、何が埋まっているの?」
聞いてはいけない。
知ってはいけない。
桜の下には、死体が埋まっているんだ。
「桜の下に……」
拓真は駆け出す。桜の樹の下に立ち止まり、幹に片手をついた。そしてゆっくりと俺のほうを振り返る。
「桜の樹の下には、何が埋まっているの?」
「よせ、止めろ、拓真」
「何で? ねぇ、何が埋まっているの? 幸彦は、何を知っているの?」
拓真は桜の樹の下に膝を付き、両手で土をかき出す。
昨日俺が掘り返したせいか、土は未だ柔らかいままだ。
スコップを使わずとも、小さな人の手で簡単に掘り進められてゆく。
「止めろ、拓真! 止めるんだ!」
俺は拓真に駆け寄って、拓真を押さえつける。
桜の根元を掘れば、見つかってしまう。
見つかってしまえば、終わってしまう。
終わってしまう。俺と、拓真の、幸せな夢が。
「止めろ、止すんだ!」
どんなに押さえつけても、拓真は止まらない。
「何が、埋まっている……何が……!」
まるで狂ったかのように、土を掻き出す。
俺がどんなに拒んでも、土は簡単に掘りかえってゆく。
そう、簡単に。簡単に、拓真の手は死体の手に、届く。
見てはいけない。
知ってはいけない。
「頼むから、止めるんだ、拓真!」
指先の、軽い感触。
息を呑む音。痛いくらいの静寂。むせ返るほどの土の臭い。
「やめろおおぉおぉぉおおお!」
叫びの、残響。
「……もう、遅い……」
拓真は青白い死体の手を握って、小さく呟いた。
「ねぇ、幸彦。全部、思い出しちゃったよ……」
顔の上にかかっている土を払いながら、拓真は笑った。
思えば桜の咲く頃から、よく笑う子だった。
けれど、こんな壊れた笑みではない。
もっと綺麗に笑う子だったのに。
ああ、そうか。
桜の咲く前は、ずっと泣いていたんだ。
「殺したんだね」
「……ああ……」
俺は小さく呻くように返事をする。
「殺した。殺したんだ。人を」
事実を自己確認するかのように、拓真は何度も繰り返す。
その声は明確に震えていた。
「殺したんだ。俺が、幸彦を」
土の下に埋まっているその顔。
土に汚れ、青白く、血をこぼしたその顔は……まさしく俺の顔。
「……だから、思い出してはいけなかったのに」
……えーん……えーん……
泣いているのは拓真。
死んでいるのは、俺。
いや、正確に言えば、俺ではない。金谷 幸彦、その人。
あの春の初めのあの夜。
金谷 幸彦は、拓真をあの公園へと呼び出した。
約束の時間に少し遅れて拓真はやって来て、そして突然幸彦から、
――俺たち、もう別れよう。
別れの言葉を、突きつけられた。
……えーん……えーん……
泣いていたのは拓真。
俺はそれをずっと見ていた。拓真の後ろから、ずっと。
「何で? どうして別れなきゃならないの? どうしてだよ!」
拓真の泣き叫ぶ声に、胸が張り裂けそうだった。
あんなに綺麗な拓真を泣かせるのは、とても憎らしかった。
足早に立ち去ろうとする幸彦に追いすがり、そして階段まで来たとき……。
すがるように伸ばした拓真の手。
その指先が背中に触れた。
――とん……。
指の先の、軽い感触。
声も上げず、金谷 幸彦は階段から落ちて、頭を強く打った。後頭部から大量の血をこぼして死んだ。
遠いバイクのエンジン音。吹き抜ける風。拓真の顎から落ちた雫。
コンクリートの階段の下、レンガの遊歩道の上、目の前に飛び込んできた、ねじた体。
流れ出る、鮮やかな朱色。
そして……。
土を掘り返す音。泣きながら、拓真は土を掘り返す。
拓真はそれを埋めたんだ。この、桜の樹の下に。
金谷 幸彦の死体を……――――
「だからこそ私が、貴方を見ていた私が、貴方に祝福を与えた。愛しい貴方に」
真実を紡ぐ口。その言葉と同時に、私を金森 幸彦と足らしめる殻を剥いだ。
まるで卵の殻のように、剥がれ落ちてゆく金谷 幸彦の殻。
それがすべて剥がれたとき、そこに現れるのは、私の本体。
私の……神の本体。
神々しい金の光を放つ翼が背中から現れる。闇夜を照らし、拓真を照らし、そして死んでしまった金谷 幸彦をも照らし出す。
「あなたの記憶を消し、私自身の記憶も封じ、金谷 幸彦の記憶を取り込み、私が貴方の愛する金谷 幸彦に成りすました」
時を止めた桜。
あの桜には、神たる私の記憶が封じられていた。
神の記憶を押し込まれた桜は、その力の大きさを持てあまし、時すら止まってしまったのだ。
「現に貴方はとても幸せだったはずだ。愛する男にふられたことも忘れ、そして金谷幸彦である私と、何不自由ない楽しい日常を送ったはずだ」
「すごく、楽しかった……」
拓真の虚ろな瞳が、楽しい時を懐かしむように弧を描く。
その瞳に、私は写っては居なかった。
死んだ魚の、濁った虚ろな……。
「ならばもう一度記憶を消し、元通りに戻ろうではないか! 私はこの茶番が気に入っている。貴方さえ望むのなら、私はいくらでも貴方に祝福を……」
「無理だよ」
とうとうと紡がれた私の言葉は、短い立った一言によって途中で切られて、否定されてしまった。
嘲笑にも似た空の笑みを唇に浮かべ、拓真は言い切ってしまう。
「あんたが幸彦でない限り、俺は何度でも思い出して……」
じっと私を見つめる瞳は虚ろ。
震える手を己の懐へと入れ、内ポケットの中から何かを引き抜く。
「何度でも同じことをするんだ」
手にあったのは、小さなナイフ。拓真はそれを、首の動脈に押し当て、そして……
――……ゴプッ……。
溢れ出る、鮮やかな朱色。
空気の漏れる音に混じって、彼の言葉が聞こえてくる。
「……か……みさま……最後の……望みを……かなえて……」
その瞳は虚ろな、死んだ魚の瞳。歪んだ魚眼レンズのように、私を映し出す。
しかしその視線は私に向けられたものではなく、私その向こう、金谷 幸彦へと向けられている。
彼が私を見ることなど無いのだ。私を愛することなど無いのだ。
たとえ今すぐ、この流れる血を止めたとしても、たとえ今までのことをすべて忘れさせても。
私がどれだけ拓真を愛しても、私がどれだけ拓真の望む姿になろうとも、私がどれだけ拓真のために嘘を塗り固めても。
拓真は私を愛することなど無いのだ。
だから私も、もう彼を望むことは無い。
それでも……彼を愛したのは、拓真を愛したのは本当だから。
だからせめても、彼に最後の祝福を。
ゆっくりと生きた瞳を閉じて、私は静かに肯定を告げる。
「…………」
彼の唇は声を形作っていたと思う。だがそれは、誰の耳にも聞こえることは無かった。
拓真は笑った。それはいつもどおりとても綺麗な笑みで、でも泣いているように見えて。
どさりと崩れ落ちた先は、金谷幸彦の上。折り重なるように死体が二つ。
そうして、三ツ森拓真は死んだ。
血反吐を吐いて、金谷幸彦の後を追った。
「……愚かな」
塗り固めた嘘は、全て解ける。
隠して忘れさせた事実は、全て思い出す。
まるで世界にかけられていた魔法が解けたように。
止まっていた時が、進み始めたかのように。
ひゅうと吹いた風に、桜の花びらが一斉に散っていった……。


翌日、桜の樹は、まるで狂い咲いていたのが幻だったかのように、枯れた。
花弁は一枚も無く、また、地面に落ちていることも無かった。
全部風が攫っていったのだろう。
三ツ森拓真と金谷幸彦は捜索願が出された。多分、見つかることは無い。
証拠隠滅をしたのは、死んだ人だから。
――桜の樹の下には、死体が埋まっているんだって……―――。
「ああ、埋まっているよ」
今は、二人分の死体。
「人間は、本当に馬鹿な生き物だ」



■アトガキ■
わかる人は分かるだろうけど、桜とSacramentをかけてみた。
読んでる途中で死んでいるのが彼だと気づいた人には、拍手をあげましょう。
気づかれちゃってたら僕ってばまだまだ技術が甘いって事だね。
あと疑問、矛盾、おかしな点は山ほどあるけど、皆さん極力スルーしてください。
ってか、何かと僕はこういう体言止めというか、ぶちぶちと千切った文章が多いなぁ。
滑らかで読みやすい文章書けないのかなぁ……orz
別に男同士でなくても成り立つけど、そこは僕なので男同士。
もっと話を細かくしてみたら、中篇くらいではいけるか?とか思う。

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プロフィール

飛鳥

Author:飛鳥
西川貴教をこよなく愛する外道女子。
ゲームが主食で、おかずは漫画&ラノベ。

恋人は愛猫と言い張る28歳。
猫にうつつをぬかしている間にすっかり脱腐してきたようで、毒気は一切無い。
せいぜいゲームが少々のお手前ですv

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