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夏のおと。

突然ですが、SSを書いてみました。
あまりに暑くて暑かったので。
夏の話を書きたくなった。
夏とか、冬とか、こう、しっかりとした温度差のある季節のが、妄想は膨らむね。
つー事で、ぐだぐだ前置きしてても仕方ないから、さっさと本題に。

まずはいつもの宣言を。
・エロは無いですがBLです。
・温い。
・悲恋。
・話としてはB級。
・美しい文章狙ってるかも。
・スゲー意味ない。
・僕の文章が嫌いな人は、見ないでね。

以上を守っていただける方のみ、↓よりお読み下さい。




どちらさまも、ようございますね?
では、どうぞ。






+++++++++++

蝉の声がする。
今年最高気温を記録した街は、焼け付くような暑さだった。
アスファルトから立ち上る陽炎が、世界をぼかしている。
太陽は世界中から影を消そうとしているかの様に眩しかった。
そんな暑い暑い街の片隅、古い小さな映画館の前。
僕はぼんやり、映画館の看板を眺めていた。
入口の硝子扉に貼られた古いポスター。
五年以上前に公開された映画なのに、ポスターの中の人物は、今にも動き出しそうな程、生命力に溢れている。
だからこそ、その隣の看板が寒々しく痛かった。
『追悼上映 主演 稲本夏生』
人の背丈程の立て看板に書かれた文字。
目も眩むような夏を思い出しながら、僕は館内へと足を踏み入れた。
--稲本夏生は、無名の若手俳優だった。
そんな彼が、数館でしか上映されないとはいえ、映画の主演に抜擢されたのは、大出世だったと言えよう。
何でも以前脇役出た映画で、監督が気に入ったらしい。
青年の甘酸っぱい夏の恋愛模様を描いた青春映画は、あの当時少しだけ世間の話題に上って消えて行った。
上映開始のブザーが鳴り響いて、照明が落とされる。
外はあんなに蝉の声が五月蝿かったのに、館内は映写機の音が聞こえる程静かだ。
甘いバイオリンの旋律。
爽やかな夏空をバックに、白抜きのタイトルが浮かび上がる。
『あの夏』
向日葵畑、青々としげる草原、入道雲、軒先に吊された風鈴、青い海。
次々と写し出される、海沿いの田舎町の美しい風景。
そして最後に、夏生の横顔。
……胸が高鳴った。
スクリーンの中の夏生は、まさにムービースターの雰囲気を醸し出している。
映画の内容はよく言って王道、悪く言ってベタ。
だが、夏生の生き生きとした演技がよく生えて、美しかった。
カタカタと鳴る、映写機の音。
あの夏。
この映画の中で、僕は夏生と出会った。
僕は映画の脇役。主人公の友人の一人。
歳が同じだったせいか、夏生は気さくに俺に話し掛けて来て、すぐに僕らは仲良くなった。
……それが恋にかわったのは、一体いつだったんだろう?
まるでひかれあうのが運命だったかのように僕たちは恋をした。
まるでポートレートの中から切り取られたような美しい田舎町での恋は、映画よりも映画めいていたと思う。
同性を愛したのは初めてだった。何よりこの映画の撮影をしている間という短いスパンでの恋は、僕を臆病にしていた。
これは夏の恋だ。
波の泡と同じく、夏が過ぎれば終わる恋。
だからあえて僕は写真を撮らなかった。メールも着信履歴も、出来るだけ消却した。
映画撮影が終わったら、何も無かった事に出来るように。ただ記憶の中にだけ残る思い出として、この恋を終わらせるつもりだった。
……分かってる、薄情なのは。
でも、怖かったんだ。
夏が終わって、夏生の気持ちが段々と冷めて行った時。
僕だけが何時までも夏を引きずっていた時。
僕はこの特殊な恋に、臆病になったんだ。
そんな僕の様子に気づいて居たんだろう。
夏生はある夜、僕を呼び出した。
口実は花火をしようとかだったと思う。
夜の人気の無い海岸で二人、子供のようにやけにはしゃいで。
そのテンションが徐々に落ち着いてくる頃、持ってきた花火は尽きた。
もう口実は無い。
けれど別れて帰るのが惜しくて、僕らは会話も無いまま海を見ていた。
吸い込まれそうな暗闇と、吸い込まれそうな夏生の瞳。
そしてふと、夜空を見つめたまま、夏生がぽつりと呟いた。
「これはただの、ひと夏の思い出なのかな」
あの夏の、クライマックスシーンの台詞。
「何だよ、台詞合わせ?」
「いいから、ほら」
笑う夏生に、僕はヒロインの台詞を思いだしながら、返答する。
「そうね、綺麗な思い出よ。夏が来る度に思い出して胸を焦がす、綺麗な思い出」
感慨無く呟いたつもりのヒロイン唯子の台詞は、自分が思った以上の切実さを帯びて、暗闇に響いた。
まるで僕の思いを代弁しているかの様だ。
なんて感傷的……と、自分の女々しさを自嘲しそうになる。
「俺は嫌だ」
空を見上げていた夏生が、こちらを向く。
暗闇の中、しっかりと目が合った。
「俺は思い出なんて嫌だよ、裕也」
「……ッ……ずるいよ、夏生」
二人の指先が絡む。
強く引かれて、抱き寄せられた。
「こんなの……思い出に出来なくなる」
抱き合って、言葉も無く唇を重ねる。
こんなに胸が焦がれる程強く、夏生を愛してしまったのは、この夏だからなのだろうか?
「思い出なんかにさせない」
「僕も、思い出にしたくない」
そして夏生は、この映画一番の見せ場である愛の台詞をそらんじる。
「裕也」
「この夏が過ぎても、愛してる」
言葉の通り、僕と夏生の関係は、夏が去って冬が来て、また夏が来てもずっと続いた。
---あの日が来る迄は。
映画はクライマックスを迎えていた。
テーマ曲の甘いバイオリンのメロディー。
寄せては返す波打際で、二人の男女が入道雲を見上げている。
少女……唯子の被った白い帽子が、風に飛ばされて、海に落ちた。
波に揺られて、帽子は消えてゆく。
『……なんだか、今年の夏みたいね』
帽子が沈んだ海を見つめたまま、唯子が微笑む。
『一瞬で沈んで行くって、言いたいのか?』
波の音が夏生の声を掻き消し、聞こえなかった唯子は不思議そうに夏生を見つめる。
『これは、ひと夏の思い出なのかな』
あの日と同じ、きっかけの言葉。
画面が滲んだ。
夏生の顔も、海も、思い出さえ巻き込んで、滲んだ。
映写機の故障ではなく、僕の目が、世界をぼかしたのだと気付くまでに、しばらく時間を要した。
『そうね、思い出よ。綺麗な思い出。夏が来る度に思い出して胸を焦がす、綺麗な思い出』
一瞬、画面に走ったジャミング。
息を呑む。
あの夜と重なって、指先が熱くなる。
『俺は思い出なんて嫌だよ、唯子』
スクリーンの中の夏生が言う。
あの日と代わらぬ、真剣な眼差しで。あの夏の夜に重ねた唇で。
熱い指先で、唇をなぞる。
唇の感触すら、今でもはっきりと思い出せるのに。
重なる唇は、もう二度と触れる事は無い。
ぽつりと、握った拳の上に雫が落ちる。
「……ッ……ずるいよ、夏生……」
あんなに熱く触れ合った唇が、今はこんなにも冷えている。
思い出なんか嫌だと言ったお前が、思い出になってゆく。
スクリーンの中でお前は、誰より輝いて笑って居るのに、この世界の何処を探してもお前が居ないなんて。
「ずるいよ、夏生……」
僕を置き去りに、お前だけが思い出になって行く。
何より痛くて綺麗な思い出に。
「思い出なんかに、したくないよ、夏生………」
僕は今、あの夏の中に居る。
狂おしい程愛した、あの夏の。
『唯子』
「裕也」
愛してる。
ただ君だけを、こんなにも焦がれる程に。
「忘れられないじゃないか………」
『この夏が過ぎても、愛してる』
何時までも。
夏が来る度に思い出して、僕の胸を熱く焦がす。
滲んだ画面はクリアにならないまま、あの夏は終幕を迎える。
走り去って行くバス。
向日葵畑の中、笑顔でそれを見送る夏生。
遠く遠く吹き抜けて行く風。
カメラはパーンして、夏空を映し出す。
それを背景に、静かにスタッフロールが流れ始める。
甘いバイオリンの音色。
主演の夏生の名前と脇役の俺の名前が、一瞬だけ同じ画面に入って、すぐに別れた。
最後の監督まで流れたスタッフロールは、ゆっくりと黒く塗り潰され、辺りが徐々に明るくなってゆく。
だけど僕は、立ち上がれずに居た。
目を閉じれば、映画以上に鮮明に思い出すそれ。
笑っている夏生。
誰より眩しい太陽。
多分もう、二度映画館で流れる事は無かろう映画。
精一杯の僕の思いを込めて、僕は黒いスクリーンに背を向ける。
心に甘い傷痕を残したままに。
夏生を、あの夏の綺麗な思い出にして。
映画館を出れば、一際高い場所で、太陽が輝いていた。
暗い館内から出た目には、太陽の光りが強すぎるようだ。あまりの眩しさに目を細める。
「もう、夏か……」
耳に届く、蝉の声。
眩しい夏空を見上げて、小さくつぶやく。
こんにちは、夏。
さよなら、あの夏。
どの夏が過ぎても、僕は君を愛してる。

+++++++++++

さよなら、あの夏。

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飛鳥

Author:飛鳥
西川貴教をこよなく愛する外道女子。
ゲームが主食で、おかずは漫画&ラノベ。

恋人は愛猫と言い張る28歳。
猫にうつつをぬかしている間にすっかり脱腐してきたようで、毒気は一切無い。
せいぜいゲームが少々のお手前ですv

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